第二章(現代語に変換)
アマチュア教授法
成功しようと思う教師は、是非とも早く弟子の要求をつかみ・これ
に何を教えたらよいか、また如何にしてその興味を繋ぐべきかと
いう事を知る才を磨かねぱならない。
生徒が授業に興味を持たなければ覚えも遅く、叉その生徒にし
てみれば、自分にとって役に立たない事ばかり教えられれば、不満
に思って辞めてしまう。この二つの点は密接な関係にある。不平
を抱いて去った一人の弟子は、その教師にとって非常な禍のもと
になる。
研究生の態度に関する一般的範則は、第三章を御覧になれば判るが
これは同時に教師にも応用出來るものであって、之に從
えば生徒は確実に自分の授業を樂しみ乍ら学ぶ事が出來るように
なる。
生徒に何を教えるかという間題に就いては、最初にその人が如何なる
場所で踊りそうに見えるか、そして彼のダンスを学ぶ目的
が何であるかを見付けることが大切である。もしその弟子が主に大き
な広い床と專門的に正しいダンス・オーケストラを持つダンス・ホ
ールやバレイ(palais)で踊るなら、きっとその人は熱心で・ダン
スを真面目に勉強し、専門的に学びたいと思っている事が判る
でしょう。
もし叉その人が、主としてもっと贅沢なレストランや遊び場所等、
床も狭く、ミユージックも早すぎる、あまり本格的でない場所で
踊るようだったら、彼は最初は、ただ床を目だたないように
氣持よく、どのパァトナ一とでも踊り廻れるだけ覚えれば充分と
いう氣持なのだ、という事が判るだろう。然し彼等が万一急に
熱心になって良き踊手の仲間にまで進むようになると、教師に最大の
満足をもたらすものは、そういう人達なのである。
次の諸点は常に留意して欲しい−−−
(1).もし生徒が万一恥しがり屋で、人前で自意識の強い人だっ
  たら、他の人々に彼の最初のレツスンを露骨にじろじろ見つめ
  させない事である。初めは完全な個人教授を行い、次回か
  らは他の生徒に授業の手伝いをして貰うようにするのもよろし
  い。(之は同時に教師が、その生徒の踊る所を見て居られる事に
  もなるから)。次に他の弟子達に授業をする時と同時に授業を受
  けるように説き奨める事である。(之はその生徒が、初めて公開
  の席で踊る時に役立つ。)職員や研究生と一緒に踊れ、やがて外
  で踊るまでに自信を持つ事が出來るように、スクール・ダンス
  をするとよい。
(2).あまり手厳しく批評しすぎて生徒を失望させない事。
(3).生徒が丁度無理せずに覚えられる程度に教える事。
(4),あまり複雑なフィガを避け、あまり職業的・專門的になる
  事を避ける事。例えぱライズの高さをやかましく計ったり、初
  心者にスウェイを教えたりなどしない事である。また第二部〔37
  -40頁〕の順序に從われることをおすすめする。
(5).クイツク・ステツプから初めてワルツ,スロウ・フォックス・
  トロツト、タンゴ.、ブルースという順序でするのが一般である。
(6).もし生徒が生れつきの才能をもった踊手であったら、その
  スタイルやムーヴメントを束縛せず、正しいテクニックを吹込
  む事によつて、モダン・スタンダードに適応するよう、巧く調
  節してやらねぱならない。然し彼をぎごちなく堅苦しくさせて
  まで直す必要はない。
(7).もし生徒に天分がないのなら、基礎ステツブをもっと充分
  に叩き込んでリズムの感覚をよく呑み込ませ、バランスとタイ
  ムによく注意を払わなければならない。
(8).男子にはガイドし、インジケイトするように教えなければな
  らず、またその責任は一つに男子の双肩にかかっているもので
  あるという事を憶えさせなければならない。次には何を行な
  うか、またこれを如何にして行なうかという事を予め知らなければ
  ならないし、叉そのバァトナーに余裕を以ってフォロウする事が出來
  るよう、しっかりとそれを示さなければならない。女子の生徒には
  フォロウする事を教える事。
(9).最後に、男子及び女子の生徒のために下地(ground work)
  を正確にきちんとする事が、今日の舞踏戦線へ、ほんの浅薄な多
  くのステツプを知っているというだけの知識と、下ごしらへの
  充分でない基本テクニックのみで武装させて送り出す事より、
  どんなに大切であるかという事を忘れてはならない。
注意一熱心な熟練したアマチュァを教えるに当たっては、公式
の試験を受けて見るつもりで勉強するよう勧誘する方が得策であ
る。ブロンズなり銀なり金なり、どこか公認ソサェテイのメダル
を獲んがためであってもよいし、どこかの競技会に参加するため
でもよい。
彼等は何らかの標準にまで達しようとすることによって、より
專心努力するようになり、非常に進歩するものである。
もしあまり職業家じみていると文句を云うなら、スヶ一ト、フ
ェンシング等を考えてみても、これは当たりまえの事であるという
ことを指摘すると良いでしょう。
第二章(原文)
アマチユア教授法
成功を欲する教師は、是非とも早く弟子の要求をつかみ、これ
に何を教へたらよいか、また如何にしてその輿味を繋ぐべきかと
いふ事を知る才を磨かねぱならぬ。
生徒が授業に興映を持たなければ覚えも遅く、叉其の生徒にし
てみれば、自分にとつて役に立たぬ事ばかり教へられれば、不満
に思つて止めてしまふ。この二つの点は密接な關係にある。不平
を抱いて去つた一人の弟子は、その教師にとつて非常な禍のもと
になる。
研究生の態度に關する一般的範則は、第三章を御覧になればわ
かるが、これは同時に教師にも適応出來るものであつて、之に從
へぱ生徒は確實に自分の授業を樂しみ乍ら學ぶ事が出來るやうに
なる。
生徒に何を教へるかといふ間題に就いては、最初にその人が如
何なる場所で踊りさうに見えるか、そして彼のダンスを学ぶ目的
は何であるかを見出す事が肝要である。もしその弟子が主に大き
な廣い床と專門的に正しいダンス・オーケストラを持つダンス・ホ
ールやバレイ(palais)で踊るなら、きつとその人は熱心で、ダン
スを眞面目に勉強し、專門的に学びたいと思つてゐる事がわかる
であらう。
もし叉その入が、主としてもつと贅沢なレストランや遊び場所
等、床も狡く、ミユージツクも早すぎる、あまり本格的でない場
所で踊るやうたつたら、彼は最初は、ただ床を目だたないやうに
氣持よく、どのパァトナ一とでも踊り廻れるだけ覚えれば充分と
いふ氣持なのだ、といふととが分るだらう。然し彼等が萬一急に
熱心になつて良き踊手の仲間にまで進むやうになると教師に最
大の満足を齎すものは斯ういふ人達なのである。
次の諸点は常に留意して欲しい−−−
(1).  もし生徒が萬一恥しがり屋で、人前で自意識の強いい人だっ
  たら、他の人々に彼の最初のレツスンを露骨にじろじろ見つめ
  させない事である。はじめは絶対的な個人教授を行ひ、次回か
  らは他の生徒に授業の手伝いひをして貰ふやうにするのもよろし
  い。(之は同時に教師が、その生徒の踊る所を見て居られる事に
  もなるから)。次に他の弟子達に授業をする時と同時に授業を受
  げるやうに説き奨める事である。(之はその生徒が、初めて公開
  の席で踊る時に役立つ。)職員や研究生と一諸に踊れ、やがて外
  で踊るまでに自信を得る事が出來るやうに、スクール・ダンス
  をするとよい。
(2). あまり手嚴しく批評しすぎて生徒を失望させない事。
(3). 生徒が丁度無理せずに覚えられる程度に教へる事。
(4), あまり複雑なフィガを避け、あまり職業的・專門的になる
  事を避ける事。例へぱライズの高さをやかましく計つたり、初
  心者にスウェイを教へたりなどせぬ事である。また第二部〔37
  -40頁〕の順序に從はれることをおすすめする。
(5). クイツク・ステツプから初めてワルツ,スロウ・フォクス・
  トロツト、タンゴ.ブルースといふ順序でするのが一般である。
(6). もし生徒が生れつきの天賦をもつた踊手であつたら、その
  スタイルやムーヴメントを束縛せず、正しいテクニツクを吹込
  む事によつて、モダン・スタンダードに適応するやう、巧く調
  節してやらねぱならない。然し彼をぎごちなく堅苦しくさせて
  まで直す必要はない。
(7). もし生徒に天分がないのなら、基礎ステツブをもつと充分
  に叩き込んでリズムの感覚をよく呑み込ませ、バランスとタイ
  ムによく注意をはらはなげればならぬ。
(8). 男子にはガイドし、インヂケイトし得るやう教へなければな
  らす、またその責任は一つに男子の双肩にかかってゐるもので
  あるといふ事をも記憶せしめなければならぬ。次には何を行は
  うか、またこれを如何にして行はうかといふ事を豫め知らねば
  ならぬし叉そのバアトナーに余裕を以てフオロウする事が出來
  るやう、しかとそれを示さなげればならない。女子の生徒には
  フオロウする事を教へる事。
(9). 最後に、男子及び女子の生徒のために下地(ground work)
  を正確にきちんとする事が、今日の舞踏戦線へ、ほんの淺薄な多
  くのステツプを知つてゐるといふたけの知識と、下ごしらへの
  充分でない基本テクニツクのみで武装させて送り出す事より、
  どんなに大切であるかといふ事を忘れてはならない。
注意一熱心な熟練したアマチュァを教へるに當つては、公式
の試験を受げて見るつもりで勉強するやう勧誘する方が得策であ
る。ブロンズなり銀なり金なり、どこか公認ソサエテイのメダル
を獲んがためであつてもよいし、どこかの競技曾に参加するため
でもよい。
彼等は或何らかの標準にまで達せんとすることによつて、より
專心努力するやうになり、非常に進歩するものである。
もしあまり職業家じみてゐると文句を云ふなら、スヶ一ト、フ
エンシング等を考へてみても、これは当たりまへの事であるといふ
ことを指摘するがよろしい。

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