第四章 |
クラス |
(A)概説 (B)專門家 |
(C)アマチユア (D)児童 |
(A)概説(原文) |
上手に個人教授をする事も難しいには違ひないが、クラスを教 |
へる事は叉一入の困難を伴ふものである。クラスではどの教師も |
あらゆる異つたタイプの生徒を巧くクラスに編成し、そのクラス |
を幸幅に皆が満足するやうにする爲めにはあらゆる智慧を絞つて |
も足りない位である。どのクラスでも成功の秘訣は、一言にして |
いふならぱ、クラスが幸幅で氣持よく行くといふことにつきる。 |
これには二つの意味がある。第一にクラスは全体がその進行に対 |
して、満足してゐなければならないし、第二には各個人個人が自 |
分自身エンジヨイしてゐなげればならない。然しこれはクラス全 |
体の進歩といふものが、生徒の才能の平均によつて制限されるも |
のであるから、一寸到達するに難しい間題かもしれない。教師 |
は遅れ勝ちの生徒が、焦慮してもがかないやうに、出來のよいのが、 |
損をしてゐる、と躁しく感じないやうに注意することが必要であ |
る。 |
教師としてクラスを作らずとも成功を得る事は不可能な事では |
ない。然し、多くの弟子はプライベイト(個人教授)よりクラス |
の方を好むから所長としてはこれを教授所のプログラムから削除 |
する事の出來る人はないであらう。叉自己満足の点から考へても、 |
クラスが漸次に進歩して行つて、殆ど独りでに上達して行くのを |
見る事程嬉しく満足感を味へる事は無いのであるから。次に掲げ |
るのはクラスを教へる上に於て遵奉すべき範則の摘要である。 |
(1) 貴方の助手に(もしあつたら)お弟子を賞める場合以外決 |
して大聲で批評する事を許しては不可い。 |
(2) 助手達が傍で立つて見てゐる時、一團にかたまつて恰も比 |
評でもしてゐるやうに思はれないやうに注意する事。 |
(3)ボール・ルームの鏡は、苦い表情を逃さず写し出すものだ |
といふ事を忘れてはならない。 |
(4).不良パアトナーを入れるべからす。 |
(5)誰にでも一晩中一人の下手なパァトナーとのみ踊らせない |
やうにする事。 |
(6)白分が演る時間をあまり長くとらない事。 |
(7) 生徒が会得し得ないやうな難しい複雑なステツプを教へて |
物識りぶらない事。 |
(8)依古ひいきをしない事。 |
(9).何よりも先づ貴方白身を笑ふ時以外あまりユーモアの気分 |
を表し過ぎては不可い。笑談はよろしい、然し生徒に対しては |
禁物である。 |
クラスの実際授業に対する注意 |
(a).「スクウェア」法によつて最初教へなさい。生徒にはその |
方が容易く思はれるから。 |
(b).一クラスに男女同数居るならば、ステツプは男は男の、女 |
は女のと別々に教へなさい。然しもし、よくあるやうに、女子 |
の方が多かつた場合には先づ男子のステツプをクラス全体に教 |
へ次に女子のみに女子のステツプを教へなさい。もし誰か「男」 |
になつて踊らねばならぬ婦人が居たら休憩毎にその組を作つて |
やるやうにしなければならない。 |
(C).クラス全体に各ステツプを最初は一人で、次にバアトナー |
同志手を肩にかげて、然る後に正しくホールドして教へる事。 |
(d).はじめ音樂無しで教へ、次にのろいミュージツクにし、次 |
に初めて正しいテムポのミュージツクにする。一人で踊つてゐ |
る生徒に貴方がステツプを教へる時でも、生徒がパアトナーと |
踊つてゐる時でもこれを適用なさい。 |
(e).貴方のステヅプ教授法を前述の第二部第一章〔37-40頁〕 |
に於て略示した順序に分割して下さい。 |
(f).第二期になるまでスウェイやライズの心配をしなくともよ |
ろしい。叉あまりC.B.M.を重大視しては不可い。唯単にターン |
をする場合、足でするのではなく、身体全体で始めるべきだと |
いふ事を説明すればよろしい。 |
(9).アマルガメイションの幾組かに基づいてプログラムを立案 |
して下さい。それぞれのステツプのみでは到底如何なる人 |
もダンスすることを習得する事は出來ない。叉生徒達にも自分 |
自身で自分のアマルガメイシヨンを編成する事を学ぶべきであ |
ると説明なさい。 |
(h).バランスは一番大切であるけれども、クラスが余りにこれ |
に煩はされないやうにしないと不可い。これは極めて巧みに殆 |
ど生徒の氣付かない中に教へられなげればならぬ。もし一人の |
生徒のバランスが非常に悪かつた場合は、その人だけに少しば |
かり特別教授を興へることをお勤めする。 |
(i).多くの場合クラスは十課連続になつてゐる。第一課が終了 |
したら、残りの九課に於て何程を教ふべきかを決定するやうに |
する。然し一つのダンスを正確に教へ込む方が中途半端に五つ |
教へるより遙か優つてゐるのであるから、これを決定するには |
慎重に控え目にする事。 |
(j).ステツプを教へた順序を正確に覚えてゐる事、さうすると |
次の學期に楽である。 |
(k)。パァトナーをつとめる貴方の助手と生徒とが一番よく合ふ |
やうに引合せ、一人一人の生徒が個々に行届いた注意を受ける |
事が出來るやうに注意する事。 |
(1).自分の仕事を徹頭徹尾辮へ、職員達がよく心得てゐる一定 |
の既定法式(ルーチン)に從つたデモンストレイションのみ行ふこと。 |
(m).時には生徒の中から一人を指名してステツプを演らせると |
よい。それは生徒を一寸得意にし、他の生徒にもステツプは自 |
分でも踊れるものである事を示すものである。、 |
(n).少しダンスを行つてはクラスをはじめるやうになさい。さ |
うすると生徒は床と音樂の感じをとらへる事が出來るから。 |
(o).時間を違ヘずに授業をはじめ、また毎日のプログラムが終 |
に行つて大急ぎに慌てて教へないで濟み、全部行渡るやうにす |
る事。 |
(B)事門家のクラス |
ー般に教師は流行を知らうとし、時勢に後れないために勉強す |
るのであつて、これらのクラスは多くの場合・・Teachers Week" |
即ち、五科目を五日聞に仕上げる「教師週間」に教授される |
のである。 |
教師週間の五日間の爲に最も適當なるプログラムは下の通りで |
ある。 |
第一日 三十分、フオクス・トロツトのシラバス(教授要目); |
一時間・フオクス・トロツトのヴアリエイシヨン;三 |
十分、クラツシユ・ダンスの基本ステツプ。 |
第二日 三十分、タンゴのシラバス;一時聞、タンゴのヴアリ |
ェイション;三十分、クラツシュのヴアリェイションo |
第三目 三十分、クヰツク・ステツプのシラバス;一時聞半、 |
クラツシユを含むクヰツク・'ステツプのヴアリエイシ |
ヨン。 |
第四回 三十分・ワルツのシラバス;一時間、ワルツのヴアリ |
エ.イシヨン;三十分ブルース。 |
第五回 残りの二時間は來るべきシーズンのための新しいダン |
スと何か最近の変化について使用せらるぺきであるo |
各ダンスを教へるのに新しいフイガや、ヴアリエイシヨンに進. |
む前にざつとでよいからスタンダードな基本ステツプの復習を以 |
て始めるのが最上の方法である。多くの教師はノートをとる時間 |
を興へられるのを喜ぶ。故に重要な点に特に力を入れる事はステ |
ヅプの簡単な説明を書取る時が便利である。斯かるクラスでは助 |
手は.白分達より遙か多くの経験を持つてゐるに違ひない教師を |
教へる手助けをしてゐるのであるから.巧みに人の氣をそらさず |
充分に彼等の役に立つやうにし、彼等が自分達より先輩である事 |
を忘れないやうに教へ込んで置かなげれぱ不可い。 |
此の教師週間の課業のプログラムは充分に教師達の希望に添ふ |
ものたるべき注意の下に選択されねばならぬ。 |
(C)アマチユアのクラス |
次の注意書は第一期の課業にのみ適用されるものであつて、第 |
二期にはもつと進んたヴアリエイシヨンを.充分進歩を途げた生 |
徒に教へてもよい。 |
クラスを十科の連続に割当てて下さい。有益で効果ある時間割 |
を次に示すと:一 |
一般ダンス 五分間 |
クヰツク・ステツプ 十五分間 |
ワルツ 十分間 |
ニユゥ・ダンス或はブルース 同 |
ダンゴ 同 |
スロウ・フオクス・トロツト 同 |
多くの教師は一時間の授業の後はダンスを続けられるやうに準 |
備するものであるが、もし不可能の場合は、そのクラスのために、 |
一時間以上を許し、授業と授業の合間に一般ダンスをさせる事。 |
十課の中の第一期に於ては次のもののみを教へる事を目的とする |
事、即ち第一期に於ては、一般的の進歩を目標とするのが得策で |
ある。斯くする時はこのクラスはもつと目覚ましいヴアリエイシ |
ョンやライズやスウェイ等々を教へる事の出來る第二期のために |
すぐれた基礎をつくる事が出來るだらう。(注意一スロウ・フオ |
クス・トロツトは他のものよりも專門的なダンスであるから、最 |
初から詳細に亙つてライズ等も教へた方が賢明な方法である。) |
クヰツク・ステツブ−−クォーター・ターンズ−−ナチュラル・ |
ピヴオツト・ターン−−クロス・シヤツセ−−リヴアース・タ |
,ンーージグ・ザグ。 |
ワルツ−−ダイアゴナル・フル・ターン−−ハーフ・ターン−− |
サイド・チエンヂ−−バツク・パツシング・チエンヂ−−アウ |
トサイド・チェンヂー普通のヘジテイション。 |
ニユウ・ダンス−−ー(或はプルース) |
タンゴー・アマルガメイション;左足よりはじめ−−一ウォークニ |
歩一プログレシーヴ・サイド・ステヅプ−−ーウオークー歩−−一 |
オープン・リヴアース・ターンの前半−−一一歩後退一ロツク |
ー一オープン・フイニツシュー−−一歩前進一−−普通のプロムナ |
ード−−ー左足前進・右足を合せる一−−もしコーナーならばライ |
ト・ターン |
スロウ・フオクス・トロツト フエザ,一−−スリーステツプ |
から「続けて」ナチユラル・オーブン・ターンに入るもの。 |
及びフエザーから「続けて」リヴアース・ウエイヴ、そして |
コーナーでオープン・ターンに入るアマルガメイシヨン。 |
どのクラスでも次の稽古に進み、新しいものを附げ加へる前 |
に、前の所を簡単に復習する事。第十課(最後)にはライズとかス |
ウエイは何を意味するかを演つて見せるがよろしい。そして目覚 |
ましいヴアリエイシヨンも二三見せる事。もし第二期に続けて進 |
むやうだつたら、新入生を仲聞に入れないやうにする。然しもし |
さういふ新しい人が出席しなければならない場合には出來得る限 |
り早く特別教授をして早く追いつくやうにしなげればならぬ。 |
(D)児童のクラス |
次に個人教授及び學校若しくは宗教学校(COnVentS)の授業に |
於げる子洪のためのクラスに就いて述べよう。 |
これには重要なる一つの記憶すべき掟がある。即ち「肉体的及 |
び知能的に制限されてゐる以上の無理な事を子供に試みさせる可 |
からず」。好成績を挙げ得る子供のクラスをつくるに極めて重要な |
二つの要素がある。(1)両観の氣をそらさぬ世才、(2)子供 |
好き。第一は自から説明がつく、第二は何故といふに、子供とい |
ふものは非常に感受性が強いから子供を好きな人と嫌ひな人をす |
ぐに見別けるものである。故にもし子供が先生を好いたならば効 |
果も早く、よい結果を得られるであらうし、叉クラスの秩序を保 |
ち生徒の興味を繋ぐ事も出來るであらう。 |
記憶すぺきもう一つの点は子供は一般に模倣によつて覚えるも |
のであるから、特に正しく演つて見せる必要がある事である。一 |
寸した不注意の間違ひでも直ぐにクラス全体にそのまま覚えられ |
てしまふ。子供のための授業は長くしては不可い。年齢の少けれ |
ば少い程時間を短くしなげればならない。 |
クラスを樂しいものにし、叉変化に富んだものにする事が肝要 |
である。次に掲げたのは子供のクラスの四学級を教へる爲の實際 |
授業の要領である(注意−一子供の授業の目的は踊手になる事で |
はなく寧ろムーヴメントの優美さと、よいスクイルとの涵養に |
ある。 |
幼稚科 |
ポルカ |
クヰツク・ステツプ−−ーウォーク、クォーター・ターンズ及びラ |
イト・ビヴオツト・ターン(注意一プル・ステヅプが難しい |
ため、ライト・ターンよりライト・ピヴオツト・ターンの方が |
易しいからである。それに幼稚者はダンシング・サンダルの踵 |
を使つてはいけない。) |
ワルツ−−−ニつのサイド・チエンヂとライト・フル・ターン。 |
中級科 |
クヰツク・ステツブ−−ークオーター・ターンズ、−一ライト・ピ |
ヴオツト・ターン−−リヴアース・夕ーンークロス・シヤツセ。 |
ワルツー−−フル・ナチュラル・夕ーンーフル・リヴアース・タ |
ーンを前進のサイド・チエンヂによつて連結する。一チエン |
ヂによつて連結されたハーフ・ナチユラル及びリヴアース・タ |
ーン。 |
上級科 |
クヰツク・ステツプー一一中級と同様。但しこれに普通のジグ・ザ |
グ並びにクロシング・フイニツシュで行ふジグ・ザグ及びクロ |
ス・ビハインド・ステツプを加へる。 |
ワルツ−−ー中級と同じものにナチユラル・スピン・ターン及びア |
ウトサイド・チエンヂとヘジテイシヨンを加へる。 |
スロウ・フオクス・トロツトーフエザ−−右足の前進スリ |
ー・ステツプから「続けて」ライト・オープン・ターンヘ入る。 |
タンゴ−−一特に要求された場合のみに、然も研究科(Finishing |
C1ass」としてのみに限る(下記参照)。(注意一多くの學校は、 |
特に宗致學校では、タンゴは特種なものと考へられてゐる。ク |
ラスに入れる前に校長の許可が必要である。叉生徒のために幼 |
稚科を出るとすぐ踵の高い靴を穿く習慣をつける事も賢い方法 |
である。 |
研究科 |
クヰツク・ステツブ−−ー上級と同様。之にリヴァース・ビヴォツ |
ト、ブラドレイ・ドラッグ及び他のスマートなヴァリェイショ |
ンを加へる。 |
ワルツー−−上級と同様。之にヘジテイション・チェンヂとダブル |
リヴアース・スビンを加ふ。 |
スロウ・フオクス・トロツト−−ー上級と同様。之にスタンダード・ |
ヴァリェイション(リヴァース及びリヴァrス・ウェイヴを含 |
む)を加へる。 |
タンゴー−−ウオーク−−ープログレシーヴ・サイド・ステツプー |
プロムナードー−−クローズド・リヴアース・ターシ及びオ一プ |
ン・リウアースターン−−ーロツクーーバツク・コルテ。 |
ニユウ・ダンス或はプルース−−ー随意。 |
上述の要領は学校に於ける普通のクラスに適用されるものであ |
つて、わづか二十分ばかりがボール・ルームに富てられてゐる場 |
合である。然し社交ダンス專門のクラスでは、もつと時間をかけ、 |
課業も大人のアマチユアのクラスと略同様の程度に増加する事が |
出來る。 |